宮地さんの特技の話(ついったまとめ)

1年から2年に上がるこの春休み直前に怪我をした。
練習中の不注意による接触事故で、相手は無傷であるのに自身だけ負傷しているのが情けない。幸い大きな怪我ではなかったが、患部をがっちり固定の上、1週間の絶対安静を言い渡されてしまった。
部活へ行っても庇って他所を傷めるぞと言われては筋トレやボール出しの補助もできない。用具準備の手伝い程度しかできず、しかし見ていれば気が急いて落ち着かない。
置いて行かれる。取り残される。不安と恐怖で医者の絶対安静という診断を反故にしそうになった。しなかったのは単に、中谷に見つかったからだった。
中谷には大きくため息をつかれ、落ち着いて治療に専念しろと春休み中の部活参加禁止を言い渡されてしまった。二週間は長い。今度こそ絶対におとなしくしているからと見学を望んでも中谷は頷かなかった。
肩に力が入り過ぎている。
中谷はそう言った。がむしゃらに練習することも大事だが、深呼吸して休養することも大事だ。怪我をして練習できないなら、急いても仕方ないだろう。お前はどうしてバスケをしている。なぜバスケを選んだ。どうなりたい。
メリハリは重要だよ。中谷はそう締めくくって、もう宮地のことばを聞くつもりはないようだった。かくして、宮地は春休みの二週間を丸ごと休養として得た。が、中学生でバスケを始めてから、これだけの長期間、丸ごとの休みを得たことはない。中三の夏で部活を引退したあとも体は動かしていた。
体を動かさない、動かせない長期の休みになにをしたらいいのか。中谷の考えてみろと言わんばかりのことばとともに呆然と持て余す。
事の顛末を愚痴混じりに仲のいい大坪と木村へ漏らせばどちらちょうどいいからゆっくりしろとしか言わない。ほしいのはそれじゃないと、偶然連絡を寄越した年上の従兄弟にターゲットを変えると、それなら環境を変えればいいという。こちらへくれば他に目が向くんじゃないの、と。時差9時間の地に誘うには随分軽かったが、従兄弟にも祖母にも久しく会っていないしそれもいいかと思った。
さっそく母親に渡航を打診すればあらいいわねと簡単に受け入れられてしまった。お父さんには自分で言うのよと言われて、帰宅の遅い父を夜更かしして待ち、話しをすれば、これまた簡単に行っておいでと言う。

…と、ここまで一気に書いたけど思ってたのと違う方向へ流れていてこれじゃなーい! となったので打ち止め! 打ち止め!
もっと、周囲にバレバレなくらいぐらぐら行き詰まってて、気持ちとしては逃げで飛び出す宮地さんと、全部分かってて気分転換してこーいって送り出す周囲の感じがイメージ…イメージなんだよ……。
バスケというか部活を続けるかどうか迷ってて、こっち(モデル)のがみんな必要としてくれるしバスケ辞めてモデルやろうかな…みたいな、逃げを打って、でもやっぱり諦めきれないんだちくしょう! みたいに腹をくくる宮地さんが書きたいんだよ…

「それってショウ? スチル?」
『もちろんスチルだよ!まさかそんな突貫でショウなんて出さない!』

あともういっこ。
これはあとからぽこっと出てきた従兄と宮地さんの会話。従兄は新人のメイクアップアーティストをイメージ。
宮地さんはショウでもスチルでも無問題そう。