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「俺に撃たせて」
反動で転がったりしないように柱に体全体を預けて立てた膝を台座代わりにする。
体を傷めないように、その柱と体の間に座り込んだ。小さな体を包むように補助して、狙う照準を支える。
「行くのか」
「……うん」
「なにか持って行けるか?」
小さく首を振る。
「そうか」
「じゃあ、これだけ持って行ってくれ」
まだ幼さの残る体を強く抱きしめる。
「熱でも感触でも記憶でも……覚えていられるところまででいいから、持って行ってくれ」
この玄関を一歩出たら、そこで忘れてしまうとしても。その瞬間まで。
「迎えが来るのか?」
「ううん、俺が決めたから、俺が自分で行かないと」
「そうか」
「……ねえ」
「迎えに行く」
「……うん」
「まあ、少しの辛抱だ。すぐに行く」
「うん、来て。早く来て。……俺を見つけて、選んで」
「2205年で、待ってる」
見送って部屋に戻りカレンダーを見る。
「……2205年」
ことしのカレンダーは先日師走に変わったところだ。
「来月じゃないか」
政府関係者に見送られて扉をくぐると、その先の案内は狐の妖怪に変わった。
その狐に導かれて進んだ先には刀が並んでいる。
見ずとも決まっている。
深い赤の鞘、四角い鍔。少し小ぶりなひとふり。
「待たせたな」