友人に「君の漢字変換ルールはよく分からない(意訳)」と言われてしまったので

■基本的な部分
書き言葉(地の文章)に関しては、基本は新聞表記用の文字づかい(共同通信社の記者ハンドブックによる)で、一部にマイルールあり、です。
たとえば「昨日」「今日」「明日」や「今」「後」は、読みかたによって漢字とひらがなを使い分けます。これは記者ハンドブックによる共同通信社内の自主統一ルールですが、朝日新聞毎日新聞など大手新聞社も共同通信社に倣ってこの表記を使っています。
「昨日」「今日」「明日」は、それぞれ「きのう」「きょう」「あした」以外にも「さくじつ」「こんにち」「あす」とも読めるので、読者にどう読めばいいのか混乱させないために、新聞では「きのう」「きょう」「あした」と読む場合はひらがな表記、「さくじつ」「こんにち」「あす」と読む場合のみ漢字表記にしています。「今」「後」は「いま」「あと」と読む場合はひらがな、「こん」「ご」と読むときは漢字です。
新聞表記は最も万人に身近な統一された表記ルールですし、そして個人的にもとても馴染み深いので、わたしも基本はこのルールに倣っています。
ただし、たとえば「研鑽」「残骸」「改竄」のような、厳密に新聞表記に従えば漢字とひらがなの交ぜ書きになるものについては、一般的な表現かどうか、漢字表記で読めるかどうかを考えて、問題がないようなら漢字表記にしています。読めないようなら言い換えを探すか、すべてひらがなにします。交ぜ書きはしない。
わたしの中の、交ぜ書きの唯一の例外は「子ども」。すべてひらがなの「こども」ではやわらかすぎて、漢字の「子供」では固すぎる。ニュアンスが伝わって意味も分かりやすいかなと思って「子ども」表記を使っています。
ちなみに「研鑽」「残骸」「改竄」は、新聞表記では「研さん」「残がい」「改ざん」と書きます。
一部マイルールは、頻出するのでは「いちばん」でしょうか。一番優れている、一番早い、一番かわいいと、「一番」を漢字にすると固くて、「最も」の意味で使っていても一番二番と順列の意味にも思われて、個人的にはどうも受け入れがたく、これにはひらがなを使用しています。いちばん優れている、いちばん早い、いちばんかわいい。
また、これも基本は新聞表記によるものですが、「可愛い」「出来る」など、当て字、もしくは当て字のように感じられるものはひらがなで表記します。それに、「かわいい」は「可愛い」と漢字を使用するより、ひらがなで書くほうがよりかわいらしさを感じられる気がして。「やわらかい」もそうですね。「柔らかい」と書くよりも「やわらかい」とひらがなを使用するほうが、より柔らかい雰囲気。花や果物などの名前を漢字で書くか、ひらがなで書くか、カタカナで書くかで雰囲気が変わるのと同じです。「檸檬」か「れもん」か「レモン」か。「鈴蘭」か「すずらん」か「スズラン」か。

こんな感じで、基本は身近な存在である新聞で使用されている表記ルールに準拠し、一部では単語の意味や雰囲気、ニュアンスに最も似合うと感じる表記を使用しています。

以下追記
話し言葉について
上記の基本的な部分は書き言葉(地の文章)が中心で、小説のセリフ部分、twitterなど話し言葉部分ではかなりフリーダムに表記しています。
基本的には書き言葉と同じルールですが、ルールにとらわれず、「この場合は漢字よりカタカナのほうがニュアンスが伝わるだろう」「このキャラクターならひらがな発音するだろう」など、最も適した、最も伝わる、最もそれらしい文字で表記しています。話し言葉は感情や人物のキャラクター・性格を当人の主観で伝える部分だと思っているので。

■複数の漢字表記があって、微妙にニュアンスが違うもの
たとえば「よる」。
IME日本語入力システムで見ると、原因・理由・頼るを意味する「よる」は「因る」「由る」「依る」「拠る」「縁る」と漢字表記だけでも5つあります。こういうケースでは、意味と漢字が確定的にひとつずつ結びついている場合は漢字を使います。「本拠地にする」の意味の「拠る」などですね。
しかし、それ以外の、似た意味で当てる漢字がふたつ以上あるような場合は、どちらを当てても違和感が残ること、日常ではあまり漢字表記しないこと、そのため分かりづらいこと、分かりづらくて文字を追う目が止まってしまうことなどから、ほとんどの場合、一律でひらがな表記としています。

■漢数字とアラビア数字
基本的にはアラビア数字を使っています。1個、2組、3本など。ただし「ひとり」「ふたり」についてはひらがな表記を使用しています。「さんにん」は使用しません。「3人」と表記しています。4人以上も同様です。
これは「ひとり」の漢字表記は「一人」であり、「1人」ではないと思っているからです。個人的に感じている微妙なニュアンスの違いですが。ただし数を数えるようなときは「1人」「2人」を使用し、単独を意味する「ひとり」のときは、雰囲気に合わせてひらがな表記と漢字表記の「独り」を使い分けています。
たまには「1人」や「一人」と書く場合もありますが、ひとつの文書の中では表記ぶれのないようにしています。
また、「ひと息」「ひと揃い」などの「ひと」は、本来ならば漢数字ですが、わたしはひらがな表記を使用しています。漢数字で表記した「一」は「いち」と読んでもらいたい(「今日」の漢字表記、「きょう」のひらがな表記と同じです)のと、漢数字の「一」は文字として簡単すぎて、縦書きでも横書きでもアンバランスに見えてしまうのが理由です。同じ理由で「ひとつ」「ふたつ」もひらがな表記を使用しています。「みっつ」からは「三つ」にしたり「3個」に言い換えたり。
「装備一式」などの「一」はまた別で、こちらはもちろん漢字表記します。

まとめると、「意味やニュアンスが分かりやすいか」「正しく伝わるか」「読んでほしい音で読んでもらえるか」「読んでいて目が止まったり、首をかしげるようなことがないか」が、わたしの漢字変換ルールです。違和感がなく読みやすいことが最優先事項で基準。
頻出しない単語や曖昧なもの、微妙なものについてはその都度辞書を引いて考えています。一般的になじみのある字かどうかも判断基準ですね。