花の開く音も聞こえていた

レースの話。
花の開く音を聞いていた人と、なんらかの縁(誰かの紹介)で会ってアドバイスをもらう主人公とナビのイメージが出てきた。

「レース中でさえ花の開く音も聞こえていたと言っていたな」
「聞き分けがすごいんだ。あの轟音の中で、ヘッドセットをつけたままでもマシンの内外、大小の音を聞いていた」
「それから運転がうまい」
「…特別に?」
「特別に」
レースの舞台に上がっていて運転が下手な人間はいない。それなのに運転がうまいと言われるのはよほどの技術が伴っているからだ。
「彼はほとんど反動もなく、猛スピードからマシンを停めることができた」

「レース中、なにを聞いている?」
「いま勘で片づけているものを説明できるようにならないと」
「音が、空気が、周囲の様子がって、いま感じている勘に理由がつけられるようになると精度が上がるし、勘を信じられるようになる。呆けていて勘を通りすごしてしまうことがなくなるよ。勘が勘でなくなり、君だけの特別なテクニックになる」

耳のよかった人:男性。
昔は耳のよさを強みにしていた速いハンドルだったが、あるときからそれまでのようには聞こえなくなり、聴力に頼りすぎていたところもあったためバランスが崩れ、自信も揺らぎ、勝てなくなった。
その後は少々荒れもしたが、結局レース自体が好きで諦められず、勉強してハンドルからナビ(コントロール)へと転向。現在はプロチームに所属。
ハンドルとして、また自身の偏った技術への頼りかたなどの経験から、パートナーのハンドル・チームへのアドバイス・苦言・戦略など提案している。