メモ代わり

――事情。
何気なく至ったその思考にはっとした。蜂須賀はがばりと身を起こす。
そうだ、何か事情があったはずだ。長曽祢は理由もなく、そんな嘘をつく性格ではない。
それを聞けばあるいは。
そう思ったが、けれど意気込みはすぐに消沈して、蜂須賀は布団の上で手足を引き寄せて抱え込んだ。
とても聞けない。少なくとも、相手の事情を考えず一方的に怒って罵り、家から蹴り出したさっきのいまでは、とても。