Buy MEという存在がある。
ヴィクトルがそれを知ったのはあるジュニアの大会だった。
同門であるユーリ・プリセツキーと同世代の少年が、Buy MEを滑っていたのだ。
ヴィクトルの記憶では、前年までの彼は悪くはないがあまりぱっとしない選手だった。それが今シーズン、ショートプログラムの滑りがぐっと良くなった。点数が大きく伸び、勢いのままフリーもノーミスで滑りきり、パーソナルベストはもちろん初めてのメダルも手に入れた。
振付がいいのだとすぐに気づいた。少年の持ち味を生かし、苦手をカバーする構成。演技としても美しい。曲によくあっている。振付をした有能なコレオグラファーは誰だろうと、プログラム表を見るとBuy MEの文字があった。
はてBuy MEとは?
どこかのリンクに所属していたとしても、この世界ではほぼ全員が個人名で活動している。Buy MEがまさか個人名であるはずはないなら、振付を専門とする事務所かグループか。
すぐさま手元のスマートフォンで検索をすると、同じ疑問を持った人々によるリアルタイムのコメントの中に、ひとつのURLが浮かび上がっていた。
サイトの名前はストレートにBuy MEだった。
Buy ME――わたしを買って。
英語でつづられたシンプルなサイトには曲の名前と時間が羅列されており、いくつかの線で打ち消されたタイトルの横にはsold outの文字と動画サイトのリンク。
Bought YOU――というわけか。

この間のこれをちょっと。
ヴィクトル22歳、勇利17歳、ユーリ&南くん15歳(年齢少し変更)