単発ネタ(昔書いたのをサルベージその8)

涙さえこぼれない

立っているだけなのに、足元から崩れていく。これは感覚だけじゃなくて実際に崩れていっている。風が舞い、髪をなぶり、クリーム色のスカートとそれよりもっと薄いアイボリーのような粒を巻き上げてどこかへ飛ばしていく。こうやって拡がっていくのだろう、この延々にも思える砂の地は。
しゃがみこんで、左手で砂を掴み、握る。形あるようで形ないものだ、砂というものは。掴んでも、握っても、持ち上げても、あっけなく手の平からこぼれていってしまう。握った砂を持ち上げて、手を広げる。すかさず縁からこぼれ落ちる。繋ぎとめようもない。
遠く遠く、海を越えていくのだろうか。大陸から飛来する黄砂のように、島国から大陸へ、行くのだろうか。私は行けるのだろうか。1人で行けるのだろうか。砂のようにここじゃないどこかへ、独りでどこかへ。
それにしてもここはこんなに広かったかと思う。前回来たときはさほど広大だと思わなかった。
ひとりで歩く砂漠というものは、かくも広いものなのか。広く、広く、延々拡がっているこの砂地に1人、たたずんでいる。
背中から砂地に寝転がった。そこからまた地面がゆるく崩れていく。埋まってしまえばいい。この砂地に自身さえも取り込まれて、砂と同じに、どこかへ飛散していけばいい。そうしたら、地球の一部になれるから。

イメージは鳥取砂丘。…とかっても言ったことないんですけどね…鳥取砂丘も年々拡大してるようで。つーか鳥取砂丘じゃなくても国内の砂丘って感じで。海外の砂漠はスケールがでかすぎる気がします。