ネタメモを引っ張り出し

エネルギーの話の場面書き散らかしを一部抜粋。

「あれも一種のエネルギーの発散なんだ」

「普段は体内のどこかが無意識下で制限をかけている力が、己の身に危険が及ぶことでリミッターが外れ、常からは想像できないほどの力を発揮する」

「発散の方法は人それぞれなんだ。彼女たちはそれが、――発散の方法とエネルギー量が少し人と違っていただけ」
「方法と、量」
「彼女たちの身に満ちているエネルギー量は僕や君より少し多い。エネルギー過多症、とでも言えばいいのかな。まあ病気ではないんだけれど」

「僕らが日々生活して消費する方法だけでは、彼女たちのエネルギーは余る。そして彼女たちの体は、誰に教えられるでもなく自然と、その余ったエネルギーを発散する別の術を見つけた」

「彼女の体はエネルギーを電気として放出することができる。もちろん放出しないことも」

「ちなみに放出しないことで体調が悪くなることはない。ただ体は発散を求めているようだから、自然と出てしまうことも多いね」

「あの研究所で行っているのは彼女らの体のメカニズムの解明、つまりは他者よりエネルギーが多い理由とそれが別の形で放出されるに至った原因を調べている」
「人体実験?」
「まさか。研究は彼女らの同意と協力があってのものだよ」
「研究してどうするんですか」
「研究して有効な応用方法を発見する、彼女たちのエネルギーが有効に利用できないか考える、いつか必ず地球のエネルギーが枯渇するときがくる。そんなときのために」

「それから彼女たちがエネルギーをコントロールする方法も考える。コントロールできず、むやみに発散していては彼女たちが不幸になるからね」

「彼女たちのエネルギーは一般的な量よりは確かに多いけれど、それでも無限ではない。そしてそのエネルギーの源はもちろん生体エネルギーなんだ」
「生体エネルギー…」
「生命の持つ力。生命を生かす力。生命を駆動させる力。だから…何を言おうとしているかもう想像できるだろうけれど」
「使いすぎれば…?」
「そう。確かに人より多いエネルギーだけれど使いすぎれば生命を脅かす。そのためのコントロール

「コントロールできずに放出を続けていれば彼女たちは短命に終わるだろう。そういうためにもあの施設があるんだ」
「あそこには彼女のほかにも、その、そういう、エネルギー過多の人が?」
「あの研究所には彼女を含めて現在3人」
「他にも研究所が?」
「北米と欧州にひとつずつ。しかしそちらにはそれぞれ、まあ言葉は悪いが、研究対象はひとりしかいない。施設としてもここに比べればとても小さい」

「一億人にひとり、とさっき言ったね。けれどそれは現在のところまだ予想でしかないんだ。本当はもっといるのかもしれない。逆にもっと割合が低いのかもしれない。男女差があるのかも分からない」

「一億人にひとりとしたって本当は60人のエネルギー過多者がいるはずなんだ。しかし現在こちらが把握しているのは5人しかいない」

「まだまだ分からないことが多すぎるんだ。他者との違いを恐れ隠れているのか、露見し他者から畏れられ迫害されているのか、逆に尊いものとして崇められているのか」

「先天性のものなのか、なにがしかの原因による後発性のものなのか。体が発散方法を発見するまで表面化しないものなのか。それならばエネルギーを秘めていても本人が気づいていない可能性が高い」

「…あの、僕はまたあの研究所に入ることができますか…?」
「君が有能なら。分からないことが多すぎるから、有能な研究者は分野を問わず常に欲しているよ」

「夢を見るんだって」
「ゆめ、」
「そう。…24年前に大きな地震が関西であっただろう」
「ああ…」
「それを、夢に見るんだって」
「…産まれてませんよね?」
「そう。産まれていない。だけど見るんだって」

「自分が大地震を起こす夢だって」

「夢だよ」

「夢なんだ」

「でも彼女にとってはとてもリアルで現実にも思える夢なんだ」

「人間が地震を起こすなんてありえないだろう?」

「でも彼女にはその力がある」

「彼女のエネルギーはとても大きい。過多量が半端じゃない。君や開花やひかりの比じゃないんだ」

「過多者の中でエネルギー量を基準に順位をつけるなら間違いなく彼女が一番だ」

「おそろしい夢だろう?」

「だから彼女は自分をおそれている」

「だからコントロールには細心の注意を払っている」

「少しでもコントロールを緩めたとき、彼女自身にも何が起こるか分からない。…そんな自分はおそろしいだろ?」