レプリカが三兄弟

「おいで」
差し出された、まだ小さな手で抱き上げられる。ぎゅっとしがみつくと結城の兄は歩き出した。

「っはは! 生まれたばかりでも、あいつもちゃんと『御手杵』なんだな!」
強くなり始めた風は雲を呼び、ついには雨が降り出した。
しかしその場を離れる者は一人としてない。
「みんなお前を待っているんだ。末の、早く目を覚ませ」
小鼓の音が高まっていく。奏者の声が高く響く。
「結城の兄さま」
「比企の。見ろ、――目を覚ますぞ」

「末の」
「大兄さま! 比企の兄さま!」

前橋東照宮御手杵レプリカ奉納見てきた。天気(山の形に添うような黒い雲→徐々に強くなる風+ときどき雨→最後にはピーカンの晴れ)がまさに御手杵の逸話にふさわしくてなんとも言えない気持ちに。
あんな狭い神社にあんなにひとがたくさんいるの初めて見たよ。愛されてるなあ。
実在刀の非現存刀、しかもとても特徴的な形で、由来も所在も経歴もその最期もはっきりしてて作りやすいし、実物がないから面倒も少なさそうで、所縁の地があちこちにあるから場所ごとに復元されてる…っていう大人の事情的なのも分かるんだけど、でもやっぱり愛されてるのかなと感じられて嬉しい。

残っている資料が土地ごとに違うから、3本それぞれ微妙に違うのが兄弟っぽいよね! という妄想でこんな話が書けたらいいなーとか。
「末の」という呼びかけ+「大兄さま」という呼びかけをしてほしかった。

ところで付喪神さんたちは10年で5歳くらい年を取る感じかな? もちろんイメージとして。