こういうのが書きたいなっていうか

書きたいところだけ書くっていうか。

――風雲急を告ぐとはよく言う。
しかし歌仙兼定は、本当に直截に急を告ぐのは音であると思っている。
なにかの割れる音、誰かの悲鳴、慌ただしい足音、そして。
「嫌な感じですね」
「……そうだね」
堀川国広と厨の片づけをしていたら、突然ビシリと音がした。音の所在を探せば、食器を収めている棚で湯呑がひとつひび割れて欠け、転がっていた。
風はない。物音もない。誰も触りもしない。
痛んでいたのかもしれないが、それにしてもいい気持ちはしない。どこか、ぞわりと不安が這うような感じがする。
ひとりでに割れた湯呑と破片の落ちた周囲を片づけて、厨の手入れを再開しようとするが、まっすぐにこちらに向かってくる足音がする。
なにかの割れる音、足音、そして。
「歌仙兼定
顔を出したのは主だ。
「すまないがいまから話をしたいことがある」
――自分を呼ぶ声。
おそらくきっと、また面倒なことが起こったのだろうと歌仙はあたりをつけた。たすき掛けを外しながら堀川に詫び、主に続いて厨を出る。
主がフルネームで呼ばわるときは、たいていろくなことがない。
割れた湯呑は燭台切のものだった。

放置本丸の話。

この本丸では、毎月二十日前後に全員参加の定例宴会がある。
なぜ二十日かといえば、なんのことはない。審神者の就任日だ。
ひと月目は慌ただしくてそれどころではなかった。だがふた月目からは落ち着いて、新たに仲間に加わった刀のあいさつを兼ねた交流の場となった。
最初の定例宴会は岩融、博多、江雪の3口、2回目は浦島、三日月、小狐丸、3回目は太郎太刀がそれぞれ食堂にしている大広間の上座に座った。
そして今回は、時限戦場(限定マップ)続きで先延ばしになっていた4回目を5回目にまとめた大宴会で、上座に座る刀も――飛び抜けて多い。
上座に向かって左から加入順に、信濃、髭切、物吉、数珠丸、膝丸、鶯丸、鶴丸、不動、日本号――
「…おい、鶴丸はどこへ行った」
信濃藤四郎です、ここに座ってるけど練度はもう56になりました! 加入後ただちに夜戦演習部隊へ組み込まれた信濃が冗談を交えながらあいさつをする。続く髭切もそれにならって、僕は46だよとつけ加えるから、広間中が笑いにわく。
それらを聞きながら長谷部は空席を睨んだ。上座のあいさつは不動から日本号へ移り、それも簡単なひと言であるためすぐに終わる。
「――まあ、よろしく頼むぜ」
と、言い終えるより少しだけ早く、すぱんっ! と勢いよく広間の障子が開かれる。
「間に合ったな! 俺は鶴丸国永だ! 練度は44! で、こっちは」
蜻蛉切と申します」
「つい先ほど顕現したばかりだ! 驚いたか!」

本丸月例宴会の話。