静かな夜だった。
だから勇利はインターホンを鳴らさず扉を軽くノックした。静かな夜だったから、それで十分住人には届いた。

「最後にクラブを見に行く?」
「行かない」
見納めと思えば行きたいかもしれないと思って勇利が聞くとヴィクトルははっきり否定した。眩しいものを見る目で勇利を振り返って、けれど何も言わない。それでも勇利には言いたいことが分かった。
未練になると思っているんだ。

「勇利はなにを持ってきたんだい?」
「えーと、チョコレートと小銭を少し。ヴィクトルは?」
「ナッツとドライフルーツ、あとこれ」
「トランプ?」
「列車の中でしようよ」

不思議とお腹は空かなかった。
持ってきたチョコレートとナッツとドライフルーツを少しずつ齧り、停車駅の売店で買った水を少しだけ飲む。
あとはトランプをして、たわいのない会話をして、うとうとして時間を過ごす。

シーズン序盤でマッカチンを失い、それでもシーズン中はそれをものともしない勢いで駆け抜けたヴィクトルがここで終わりにしたい、と言ったとき、勇利の胸に宿ったものはなんだったのか。
否定も肯定もせず、ただ
「僕も一緒に行きたい」
とだけヴィクトルに伝えた。

明言せずともお互いに避けたい話題がなにかは分かった。
スケートのこと、スケートに関わる友人知人のこと、長谷津のこと。心残りになることは一切不可だ。

「ヴィクトルの心音がよく聞こえる…特等席だ」
「勇利ばかりずるいよ、俺も勇利の音聞きたい」
「じゃあお腹に手をまわして。拍動が聞こえるよ」

Run Away With YouとMaking The Most Of The NightとAll ThatとStay Goldをぐちゃぐちゃに混ぜて魔解釈。
…どうしてこうなった。

ready madeの曲目メモ

You Gotta Be(Des'ree)
Strong Enough(ステイシー・オリコ
主よ、人の望みの喜びよ(讃美歌)
Divine(t.A.T.u.
Clowns (Can you see me now?)(t.A.T.u.
Wuthering Heights(ケイト・ブッシュ
Frozen(マドンナ)
I Could Be the One(ステイシー・オリコ
Burning Out(Tata Young
I'm Kissing You(Des'ree)
Dark Waltz(ヘイリー)
I'll never say(あえて言えばアヴリル・ラヴィーン?)
All That(カーリー・レイ・ジェプセン
トロイメライ
ジムノペディ
悪魔のトリル
ゴルトベルク変奏曲
Do Me More(安室ちゃん)
CASI CIELO(カシ・シエロ/西語でAlmost Heaven(天国にいるかのような))(スタバのコーヒー)
ペトルーシュカ(ロシアンバレエ)

アイス・ナイン
SF小説「猫のゆりかご」に出てくる架空の物質。
水の結晶形のひとつで、室温で固体。アイス・ナインの結晶は液体の水に触れると徐々にそれらを結晶化させる(液体の水の分子に固体の形に配列する方法を教える種になる。(by wiki))
融点は摂氏45.8度(華氏114.4度)なので簡単には融けない。

アイス・ナインっていう音がいいね。

ユーリネタ妄想だけ

レオくんの周囲に音楽があふれている話(レオグァン)と勇利がヴィクトルの振付師になる話(ヴィク勇)が読みたい。
書きたいではなく読みたい。
いや自分が書ければいいんだが、書く気というか書けそうな気がしなくてな…。
妄想だけで楽しんでいる。

ヴィクトル23歳の勇利17歳(ユリオ11歳)で、前シーズンはテスト的にミラかユリオの振り付けをして結果を出した(台乗りさせた)勇利が、ヤコフに認められてヴィクトルの振り付けをするんだ。
勇利はロシア在住のひとり暮らしで、家庭環境はよくない。ロシアにいるのも事情があって。
スケートはもともとやっていたけど、事故による怪我でシングルの選手としての道は絶たれた。
アイスダンスならできなくはないけど「僕のやりたいこととは違います」(by勇利)で自身が滑る道は15歳にして閉ざした&閉ざされた勇利。
いろいろあって逃げるようにロシアに移住して(できるのか?)振付師になる。
年齢差からしてオリジナルでやれっていうレベル。

テレパシー?的な話

「ゲートを閉めろッ!」
その声に最初に動いたのは平野だった。
操作盤に取り付き、殴りつけるようにして「閉」のボタンを両手で叩いた。閉鎖指示を受けた門は軋む音を立てながらもまたたく間に閉まっていき、閉めろと叫んだ御手杵を門の向こうに取り残してその動きを止めた。
自ら操作をしたもののいまだボタンの上にある平野の手は震え、表情は愕然としている。長距離を走ったかのごとく呼吸が浅く膝もがくがくと震え、崩れそうになった体は平野に先を越された同田貫が受け止めた。
「…あ…ぼ、僕…」
「平野」
歌仙がそっと背を撫でる。
「よくやってくれた」

――かせん、兼定、長、曽ね、虎徹
「…誰だ?」
――へし切はせべ、ししおー…同田貫まさ、くに、えーと…
「どこにいる」
――あー、そうだぁ…和泉のかみか…和泉守、兼定…ごめんなあ
――やま、伏、国広、はちす、か虎徹、おーくり、から、山姥切、くにひろ
――次郎たちと、おれ…
「…御手杵?」
いずこからか聞こえる途切れ途切れの声が読み上げるのは、この本丸における最高練度たち、第一層にいる者の名だ。それも以前蜻蛉切が聞いた、第一層メンバーに加わった順だ。
本丸創成期ともいえるごく最初期にわずかの間だけ存在した一軍。歌仙兼定を隊長に、長曽祢虎徹へし切長谷部獅子王同田貫正国和泉守兼定。練度を上げて彼らに追いついた山伏国広、蜂須賀虎徹、大倶利伽羅、山姥切国広。そしてめきめきとその能力を現して最後に加わった次郎太刀と御手杵

「どこにいるんだ」
――水の音、する。
「水?」
――ごうごういってる。風の音も。すっげー山おろし。
「山の近くか。湖か」
――分かんねえなあ。明るい、まぶしい、でも暗い。
「どこだそこは。もう少し分かることはないか」
――あったかくて寒い…あ、光った。
「光った?」
――いなづま。
検非違使なら逃げられるだけ逃げろ」
――ちがう…ふつ…の…

「おっ、御手杵っ、さんっ」
「おー、平野。迎えに来てくれたのか」
「…お怪我は」
「ああ、もう平気、全然大丈夫。…平野、嫌な役目させてごめんなあ、ありがとなあ」
「っ! いいえ、いいえっ、僕はっ」
「俺が閉めろって言ったんだ。聞いてくれてありがとな」
平野はもうなにも言えない。審神者に背を支えられ、しゃがみこんだ御手杵に片手を握られながら帽子を握りしめて涙を流すことしかできなかった。

これでうちのとんぎねも始まってほしい(願望)(始まる予感がしない)
うちの平野と御手杵は同日加入なので仲良しです。